あやきむ昨年、私の職場に発達障害の薬剤師が入ってきました。
新卒で入った大手薬局チェーンで、仕事がうまくいかず、心を病んでしまって、転職してきた子でした。
その子を見ていて、発達障害で薬剤師として働く大変さを感じたので、記録に残しておこうと思います。
ちなみに、その子に先輩としてアドバイスしたかったのですが、コミュニケーションがうまく取れず伝えられなかった後悔もあります。
同じように悩んでいる薬剤師に届けば嬉しいです。
発達障害の薬剤師は珍しくない



まず覚えていてほしいのは、意外と世の中には発達障害の子が多いということ。
実は高学歴にも多い発達障害
発達障害というとどんなイメージでしょうか?
小学生の頃、教室内をうろうろしていて、落ち着きのない子といったイメージがありませんか?
発達障害と言っても、どんな症状があるかは人によってそれぞれ異なります。
勉強が苦手な子もいれば、得意な子もいます。
発達障害の人はある分野に精通していることも多く、薬学部や薬剤師にも多くいます。
(ちなみに医師にも発達障害を持っている人はいます。)
薬剤師資格があっても、うまく働けない
発達障害の人は、学力が高い人もいるので、薬剤師資格は問題なく取れたりします。
ただ、大学での勉強と職場では、求められることが異なります。
大学では自分のペースで勉強をして、テストで点数を取れていれば、怒られることはありません。
一方で、病院や薬局での仕事は、マルチタスクやコミュニケーション能力が求められます。
社会で求められること(マルチタスク・コミュニケーション能力)が発達障害の人が苦手とする分野で、働きにくいと感じる理由です。
薬剤師の仕事で求められるが、発達障害には難しいスキル



どんな薬剤師業務が、発達障害の人と合わないのか、整理しました。
マルチタスク(調剤・投薬説明・監査など)
発達障害の人にとって、一番仕事を困難にしているのがこのマルチタスク。
発達障害の子は、集中すると人並みはずれた集中力を発揮します。
一方で、マルチタスク(次々に、もしくは並行していろんな仕事をすること)が苦手。
普通にできることも、マルチタスクになるとできなくなったりします。
そして、薬局で求められることのほとんどはマルチタスクなのです。
その時の薬局内の状況を見て、調剤をするのか・投薬に行くのか・監査をするのか、と言った切り替えが必要。
その状況判断がうまくいかずに、必要な時に必要なことができない上に、人より神経を使って疲れてしまうのです。



仕事の優先順位をつけることも苦手なので、忙しい時に必要ない仕事をやってしまう特性もあります。
コミュニケーション能力
病院や薬局内では、コミュニケーション能力が欠かせません。
患者さんとだけでなく、薬剤師や医師などの同僚とのコミュニケーション能力がすごく大事です。
まず、私の職場に来た子は挨拶やお礼ができませんでした。
挨拶ができないので、同僚には変人扱いされてしまいます。
お礼ができないと、嫌われる確率も増えます。
さらに、業務に関するコミュニケーションも不足しがちで、こんな風に見られやすいです。
- あの子に仕事の伝達をしても無駄だ(無視されるように見える)
- あの子から何の報告も上がってこない
- あの子がどんな仕事をして、どんな問題にぶつかっているのかも全くわからない
そういったことが重なって、最悪の場合、職場の人に嫌われることになってしまいます。
マイペースすぎる
発達障害の人は、良くも悪くも周りを気にしません。
周りがバタバタと忙しくしていても、自分の仕事をゆっくりこなしていたりします。
さらには、時間が来たからと、忙しい職場を横目に休憩に行くことも。



私もこれはとても苦労しました。
患者さんが行列で待っていたにも関わらず、鑑査の途中でいきなりトイレに行って帰ってこなくなったこともあります。
忙しい時は、トイレや休憩に行かず、仕事をこなす。これが今の日本の職場では普通ですよね。
マイペースに行動しすぎると、患者さんや職場の人から怒られたりします。
職場でどんな問題が起こりやすいのか



発達障害の薬剤師がどんな問題に直面しやすいのか考えてみました。
発達障害と一口に言っても、人によって得意なこと・苦手なことは様々。
みんなに当てはまるわけではありませんが、一般的な問題として参考にしてもらえたら嬉しいです。
信頼関係が築きにくい
仕事で一番大切なことは信頼関係の構築です。
上司や同僚、そして患者さんと信頼関係があれば、例えば仕事が遅かったり、ちょっとしたミスをしても許されたりします。
そして、信頼関係は日々の真面目な仕事への取り組み態度や日常のコミュニケーションを通して構築されます。
ASD傾向が強ければ、相手が嫌がる発言を悪気なく連発して嫌われるかもしれません。
ADHD傾向が強ければ、言われた仕事を中途半端で投げ出して、不信に思われるかもしれません。
実際に私の薬局の薬剤師も、次のようなことでうまく信頼関係を築けずにいました。
- 挨拶・お礼をしない
- 仕事を途中で投げ出してトイレに行く
- 相手との距離感覚を掴めない(仲良くないのにいきなりプライベートの話をする)
- わからないことは聞かずに放置など
職場で嫌われて孤立、本人も疲弊する(最悪の場合、適応障害やうつ病まで)
信頼関係が築けない結果、どんどんと孤立していきます。
時には陰口を叩かれることがあるでしょう。
みんなに共有されることが、その子には共有されないということもあるかもしれません。
そして、どんどん仕事がやりにくくなってきます。
発達障害は、1人が好きそうに見えますが、1人になりたいわけではありません。
結果的に、仕事や人間関係に疲れて、うつ病や適応障害を発症する発達障害の薬剤師が多いです。
そして、問題なのは、2次障害としてのうつ病や適応障害を心療内科の医師が見抜くのが難しいこと。
根本の発達障害の特性を理解して、対処しないといけないのに、抗うつ剤だけ飲んで、また復職しまた病む。を繰り返している人も少なくありません。
まとめ:発達障害は特性を理解して、自分に合う仕事を考えた方が良い
今回は発達障害の薬剤師がなぜ働きにくいのかをまとめました。
発達障害は病気ではないので、休養や服薬で治るわけではありません。
一度会わないと思った仕事は、将来も合うことは難しいと思われます。
もし、自分が発達障害であるならば、どういうことが苦手で、どういうことが得意かを洗い出す必要があります。
また職場の人に、発達障害の特性を理解してもらうことも大事です。
次の記事では、発達障害の薬剤師が向いている仕事・職場を考えていこうと思います。









